研究概要 |
前立腺癌における再燃機序の解明するため、前立腺癌治療におけるタンパク質の変化の解析を始めた。これまでインフォームドコンセントの得られた治療経過の異なる121検体の血清を複数名の当該疾患患者から採取し、以下の手順でタンパク質解析実験を行っている。(1)カラムを用いて血清から12種類のメジャータンパク質(アルブミンやIgG等12種類)を除去し、これらが取り除かれたタンパク質画分(以下スルー画分)を得る(2)スルー画分にプロテアーゼインヒビターを添加後溶液を限外ろ過膜を用いて濃縮し、尿素/チオ尿素系のバッファーを添加してトリブチルボスフィン及びアクリルアミドで還元、アルキル化を行い、その後アセトン沈殿によってタンパク質を抽出する(3)(2)の沈殿物を尿素/チオ尿素系のバッファーで溶解し、等電点範囲3.0-6.0, 4.0-7.0, 7.0-10.0の3種の等電点電気泳動ストリップゲルを用いて等電点電気泳動を行う(4)(3)より得られたストリップゲルを用いてSDS電気泳動を行う(5)(4)より得られたSDS電気泳動ゲルをCoomassie Brilliant Blueを用いて染色する(6)染色されたタンパク質スポットを専用の解析ソフトを用いて検体間での比較解析を行い、異なる治療経過間でのタンパク質変化に関する情報を得る。今後、研究を重ね、研究発表・論文作成を目指す。 研究発表の概略は以下の通りである。骨転移を有する再燃性前立腺癌患者5例に骨粗鬆症治療薬のビスフォスフォネート製剤を用い、抗腫瘍効果が得られるか検討した。患者の認容性は良好であり、大きな副作用は見られなかった。PSAは1例低下し、疼痛の悪化も認められなかった。前立腺癌の再燃には、骨転移の状態が予後に大きく影響するが、ビスフォスフォネート製剤は治療の選択肢になりうるといえた(発表論文)。
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