研究概要 |
1 ヒト前立腺癌細胞株DU-145細胞とDU-145にアンドロゲン受容体(AR)のcDNAをトランスフェクションしたDU-145/ARを用い、両細胞株における18種類のケモカイン受容体(CXCR1,CXCR2,CXCR3,CXCR4,CXCR5,CXCR6,CCR1,CCR2,CCR3,CCR4,CCR5,CCR6,CCR7,CCR8,CCR9,CCR10,CX3CR1,XCR1)の発現の有無をRT-PCR法にて検討した。また発現に差を認めたケモカイン受容体に対しては、それらのリガンドを細胞株に作用させ移動能の変化をみた、DU-145はDU-145/ARに比べCXCR4とCCR1のmRNAの発現が亢進していた。更にDU-145ではそれらケモカイン受容体のリガンド(SDF-1α,MIP-1α)に反応し有意に移動能が亢進していた。一方DU-145/ARの移動能にはこれのリガンドは影響を与えなかった。以上よりARの存在が一部のケモカイン受容体の発現に影響を与えており、その細胞移動能にも関与していることが示唆された。 2.有骨転移前立腺癌症例の前立腺針生検組織におけるCXCR4の発現と予後との関係について検討した。前立腺癌骨転移症例患者全体の94%にCXCR4の発現が見られ、CXCR4染色性強陽性の患者は他の患者に比しその予後は不良1であった。 3.各種前立腺癌細胞(LNCaP, PC-3,DU-145,DU-145/AR)と正常前立腺細胞(PrEC, PrSC)におけるHGF関連因子のmRNAの発現をRT-PCRにてHA1-1タンパクの発現をFACSにて検討した。またそれらの細胞の培養上清中のsoluble typeのHAI-1の有無をELISAにて測定した。前立腺癌細胞と前立腺上皮細胞(PrEC)には、HAI-1(HGF activator inhibitor type 1)の発現が確認されたが、前立腺間質細胞(PrSC)には発現を認めなかった。培養上清中のsoluble typeのHAI-1の有無も上記のmembrane typeの発現と同様の結果であった。またアンドロゲンは、一部の細胞のHAI-1の発現に影響を与えた。
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