研究概要 |
ヒト培養細胞(前立腺癌;LNCaP, PC3, DU145,正常前立腺上皮細胞;PrEC)およびヒト前立腺針生検検体をサンプルとして、real-time PCR法により、プロスタグランジン合成系(COX-1, COX-2)、同分解代謝系(prostaglandin transporter PGT, 15-hydroxyprostaglandin dehydrogenase PGDH)のmRNAレベルの発現定量を試みた。前立腺針生検検体では、laser capture microdissectionにより前立腺癌細胞と、コントロールとして前立腺肥大上皮細胞を同一標本より補足した。PrECでは発現していたCOX-1, COX-2はいずれの培養前立腺癌細胞でもほとんど発現を認めなかった。PC3およびdihydrotestosteroneの存在下に培養されたLNCaPではPGTの発現の減少(5分の1以下)と著しいPGDHの過剰発現(約248倍)を認めた。一方、DU145ではこれとは逆にPGTの過剰発現とPGDHの極端な発現の減少(約20分の1以下)を認めた。前立腺針生検検体では、発現量のPGDH/PGT比は前立腺肥大上皮と比べて、癌細胞において5倍から614倍もの高値を示した。この傾向と、Gleason scoreや分化度との相関は認めなかった。また、COX-1, COX-2の発現は一定の傾向を示さなかった。プロスラグランジン分解代謝系遺伝子群も、産生系遺伝子群の発現異常とともに発現の状態を変化させることにより、細胞内外におけるプロスラグランジン環境を特定の異常状態に導き、細胞内外に存在する特異的受容体を介して発癌、細胞増殖、アポトーシスシグナリングの制御に関わっていることが予想される。今後、前立腺癌のみならず、腎癌、膀胱癌標本に関しても定量分析予定である。
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