研究概要 |
背景/目的:インターロイキン1レセプターアンタゴニスト(IL-1Ra)遺伝子多型がインターロイキン1を介する炎症性疾患と関連があることは証明されている。我々は腹膜透析患者の生存率およびテクニカルサバイバルに影響を与える独立危険因子を評価した。同様にインターロイキン1レセプターアンタゴニスト遺伝子多型が腹膜透析患者の予後に与える影響についても評価を行った。 方法:我々は8施設で腹膜透析治療を導入された日本人の患者129名をレトロスペクテイブに解析した。IL-1Ra遺伝子多型は腹膜透析治療導入時にPCR法を用いて解析し、他の臨床的項目および生化学的測定値も記録した。IL-1Ra遺伝子多型および臨床的項目,生化学的測定値が腹膜透析患者の生存率およびテクニカルサバイバルに与える影響について多変量コックスプロポーショナルハザードモデルを用いて解析した。 結果:IL-1Ra遺伝子多型の頻度はIL-1RN*1/IL-1RN*1とIL-1RN*1/IL-1RN*2がそれぞれ84.5%と15.5%であった。患者生存期間の中央値は37ヶ月であり生存率は2年および5年がそれぞれ92.8%および87.9%であった。生存率における独立予後予測因子は年齢,心血管合併症,血清アルブミン値であった。腹膜透析期間の中央値は32ヶ月であった。腹膜透析より脱落した患者は37例でありテクニカルサバイバルは2年,5年がそれぞれ92.0%と72.7%であった。テクニカルサバイバルにおける独立予後予測因子は血清アルブミン値,腹膜炎罹患頻度,IL-1RN*2の存在であった。 結論:血清アルブミン値は腹膜透析患者における生存率およびテクニカルサバイバル双方のもっとも強い独立予後予測因子であった。インターロイキン1レセプターアンタゴニスト遺伝子多型は腹膜透析患者のテクニカルサバイバルに影響を与えることがわかった。
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