研究課題/領域番号 |
17591683
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
鎌田 雅行 高知大学, 医学部, 助手 (90304683)
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研究分担者 |
執印 太郎 高知大学, 医学部, 教授 (80179019)
大河内 寿夫 高知大学, 医学部附属病院, 医員 (60380333)
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キーワード | 癌 / 遺伝子 / メチル化 / HOX / BMP |
研究概要 |
DNAの異常なメチル化による癌抑制遺伝子の不活化は発癌の過程で重要な意味を持つが、腎癌におけるエピジェネティックな遺伝子発現異常は未解明の領域であった。本研究では、これまでにゲノムワイドなDNAメチル化部位解析を施行することで、HOXB13遺伝子が腎腫瘍特異的メチル化を示すこと、またその発現により細胞増殖が抑制されることをあきらかにしている。腎癌症例では約半数にVHL遺伝子の異常が認められることから、HOXB13不活化とVHL遺伝子異常あるいはVHLタンパクの機能に相関があるか検討を行った。その結果、HOXB13のメチル化とVHLの不活化に相関は認められず、両遺伝子は異なる経路を介して、癌化の制御に関わっていることが示唆された。 さらにMCA/RDA法により腎癌細胞株を用いて同定したメチル化遺伝子群について、腎癌以外の癌でも異常メチル化が起こっているか検討を行った。その結果、TGF-βファミリーに属するBMP-6遺伝子が、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)およびバーキットリンパ腫(BL)症例ならびに同細胞株で高頻度の異常メチル化とそれにともなう遺伝子不活化を示すことがあきらかになった。さらにDLBCL症例の予後解析の結果、BMP-6メチル化は予後不良因子であることが判明した。 本研究により腎癌の発症と悪性化にHOXB13の関与するpathwayの異常が関わっていることが初めてあきらかとなり、これまでの血管新生因子(VEGF)の阻害を作用機序とする腎癌治療薬とは異なる作用機序を持つ新規治療薬開発の可能性が開けた。また、HOXB13遺伝子は腫瘍特異的なメチル化を示すことから、メチル化を指標とする腎癌の新規腫瘍マーカーとして有望であると考えられた。一方、BMP-6遺伝子のメチル化は悪性リンパ腫DLBCの予後を規定する新規マーカーとして、有用であることが確かめられた。
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