研究概要 |
目的:主として異なる前立腺癌細胞株を用いてスタチン(HMGCo-A reductase inhibitor)によるRho-Rho kinase系を介した前立腺癌増殖制御機構を明らかにする。 結果:(1)前立腺癌細胞増殖・運動性におけるスタチンの影響 3つの前立腺癌細胞株(LNCaP,,PC-3,DU145)を用いてその増殖曲線および細胞運動性に及ぼす各種スタチンの影響を検討した。いずれのスタチンにおいても有意な細胞増殖および細胞運動抑制が観察され、その程度の強さははpravastatin<fluvastatinくsimvastatinの順であった。 (2)スタチン刺激による低分子G蛋白の発現変化 比較的低分子G蛋白の基礎発現量の高いPC-3細胞を用いた検討の結果、スタチン投与により、Rac1のリン酸化は濃度依存的に抑制され、蛋白レベルは不変であった。一方、RhoAの発現レベルは濃度依存的に増加した。 (4)スタチン刺激による各種シグナル伝達関連蛋白の発現変化 Statin刺激時に変化する蛋白の中で特にStress Activated Protein Kinases(SAPKs)であるp38MAPK,JNKについて前立腺癌のautocrine growth stimulatorとして作用するInterleukin-6(IL-6)との関連について検討したところ、IL-6の分泌調節にはp38MAPKが主たる促進因子として作用していることがわかった。 結論:スタチンは特たアンドロゲン非依存性前立腺癌細胞に対する増殖・運動抑制効果を有することが明らかとなった。その効果はstrong statinと呼ばれるコレステロール低下作用の強いものほど顕著であった。これにはおそらく低分子G蛋白の活性変化が関与しており、おそらくはRac1のリン酸化上昇とこれとは反対にRhoA蛋白レベルの低下が作用していることが予想された
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