研究課題
基盤研究(C)
効果的な血管新生阻害療法開発のため、種々の血管新生促進分子受容体の下流で共通に作用して血管新生を制御する細胞内シグナル伝達分子の同定を行った。その結果、a Src familyのFynというチロシンキナーゼがFGF-2による血管内皮細胞の分化を制御していることb SrcがHGFやangiopoietin 1による血管内皮細胞の分化を制御していることc FesがFGF-2による血管内皮細胞の遊走を、またangiopoietin 1による血管内皮細胞の増殖を制御していることを明らかにした。従って、Src family kinasesとFesは、効果的な血管新生阻害療法のよい分子標的となることが示唆された。一般に、血管新生阻害療法は動物移植腫瘍モデルでは、単独で強い抗腫瘍効果を示すものの、ヒト癌では効果に乏しい。ヒト癌は臨床的に問題となる大きさに成長するまで20年以上を要し、しかも癌組織内の毛細血管は慢性虚血状態にあることが報告されている。従って、ヒトでよい抗腫瘍効果が得られない理由の一つに、内皮細胞が慢性的に低酸素状態にさらされていることが考えられる。そこで、Src family kinasesの阻害剤であるPP2の、血管内皮細胞の生物学的反応阻害効果に対する低酸素の影響を検討した。すると、低酸素状態で7日以上培養した血管内皮細胞では、PP2の阻害作用が減弱しており、抗癌剤などの薬剤を細胞外に排出する蛋白の一つであるmultidrug associated protein 1の発現が亢進し、この分子の発現をsiRNAで抑制すると、PP2の効果が回復した。従って、PP2のような低分子量キナーゼ阻害剤を用いるときには薬剤排出ポンプ阻害剤を併用すると、効果が改善する可能性があることを見いだした。
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