研究概要 |
(1)MRIによる女性骨盤底の解剖学的評価 [評価の実際]骨盤底弛緩を有する女性27名を対象に,骨盤MRI T2強調,矢状断(正中より左右に3cm),横断像(膀胱頚部を中心に上下5cm)を安静時と怒責時の2回撮像した.画像はすべてデジタルデータ(DICOM形式)とし,各個人の問診による情報,および鎖膀胱尿道造影をはじめとする各種客観的所見とともにパソコン上に保存した。MRI画像データは他の所見をすべて隠した状態で,画像解析ソフトを用いて解析した.すなわち,肛門挙筋の体積(LA-V),肛門挙筋裂孔面積(LA-A)の算出や,肛門挙筋の左右差の有無,障害部位があればその場所と程度などを記録した.なお,QOL評価としてKHQ(キング健康調査票)の日本語版の質問と,既往歴等についての問診(とくに骨盤内手術の有無と出産歴については詳細に)を行った。コントロールのボランティアには,同意の得られた女性に対し,骨盤底弛緩のある女性に行った条件とまったく同様の条件でMRIを施行した。 (2)筋力測定用経膣プローベによる女性骨盤底の機能的評価 [評価の実際]経膣プローブの構造は,円柱形(直径2cm×長さ30cm)の金属の駆体先端に,細長い板ばねになった接触圧-変位計のセンサーが90度間隔に4本取り付けられている.これらセンサーは金属の駆体内に出し入れが可能で,外に出すと外周が大きくなる構造となっている.プローブ全体にコンドームをかぶせ膣内に挿入し計測する.被検者の体位は砕石位とし,計測は膣内の3つの高さ(a;腔円蓋部,b;LAが膣に接する部,c;aとbの中間)にセンサーがくるようにプローベを保持し,それぞれの高さで,i.2〜3秒間の随意的骨盤底筋の収縮(VPFMC)と,ii.3〜5回の咳嗽を命じて反射性に誘発させる骨盤底筋収縮(CPFMC)の2種類の筋収縮力を評価した. (3)まとめ 上記(1),(2)より,本年度は以下の検討結果を得た。 閉経女性では加齢に伴い恥骨-尾骨筋体積が減少する.しかし,骨盤内臓器下垂のない正常骨盤底を有する女性では,肛門挙筋裂孔の面積は変化せずほぼ一定であった.恥骨-尾骨筋の体積を肛門挙筋裂孔面積で除したLA-V/LA-Aは,骨盤底のLaxityのよい指標となる可能性があると思われた.
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