研究概要 |
女性の排尿障害や骨盤臓器脱は骨盤底機能障害に起因することが多い.女性の骨盤底は,膀胱・尿道,子宮および直腸を骨盤底筋(主に肛門挙筋LA)が取り囲み閉鎖する構造となっており,LAが収縮することで骨盤底の閉鎖がはかられる.LAの機能不全があると閉鎖性が悪くなり,尿(便)失禁や骨盤内臓器下垂を生じる。本研究は,骨盤底機能障害を有する女性のLAを,MRIと筋力測定用経腟プローベの2つを用いて,解剖学的ならびに機能的に評価し,新しい骨盤底機能障害の評価方法を確立することを目的とした.前年度までに,閉経女性では加齢に伴い恥骨-尾骨筋体積が減少するが,骨盤内臓器下垂のない正常骨盤底の女性では,肛門挙筋裂孔の面積は変化せずほぼ一定であったことから,恥骨-尾骨筋の体積を肛門挙筋裂孔面積で除したLA-V/LA-Aは,骨盤底のLaxityのよい指標となる可能性があることを示した.これをもとに本年度は骨盤臓器脱を有する女性を対象に同様の測定を行った.結果は正常群と比し,骨盤臓器脱を有する女性は有意にLA-V/LA-Aが低くなることが示された.すなわち,LA-V/LA-Aは女性骨盤底のLaxityあるいは脆弱性を示す指標になることが確認できた.またLAのMRIによる検討では,画像上恥骨直腸筋の障害の強いものがより機能障害の強くなる傾向を認めた.またLAの収縮力が著しく低下した群(オックスフォード筋力0-5スケール2以下)と,LAの収縮力が保たれている群(同スケール3以上)を比較すると,両群間で筋量には有意の差を認めなかった.すなわち筋力の低下した女性は,筋量が低下しているのではなく,除神経による機能障害が根底にあるのではないかと推測された.
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