研究概要 |
我々は、高血圧に関わるペプチドであるアンジオテンシンIIが前立腺癌細胞の増殖効果を持ち、降圧剤であるアンジオテンシンII受容体ブロッカー(ARB)が癌細胞の増殖抑制および抗腫瘍効果を持つことをすでに発表した。興味あることに、前立腺癌細胞や間質細胞はアンジオテンシンII受容体(AT1レセプター)を発現していることも、我々は確認している。このことは、ARBが前立腺癌細胞や間質細胞にも作用することを意味しており、ARBが前立腺癌に効果があることを示唆している。 この研究では、前立腺癌細胞と間質細胞に対して増殖作用のあるアンジオテンシンIIに焦点をあてた。具体的には、アンジオテンシノーゲンやアンジオテンシンII, AT1レセプターのmRNA発現を調べ、かつ癌組織標本を各抗体で免疫染色し、発現を調べた。また、前立腺RASを培養細胞(in vitro)およびヌードマウスを使ったin vivo系の実験で調べた。 アンドロゲン非依存性のPC-3細胞と間質細胞PrSCとを混合して、ヌードマウスの背部に皮下注射し、腫瘍形成を観察した。PC-3細胞はアンジオテンシンII受容体であるAT1レセプターの発現は低い。また、PC-3細胞単独の腫瘍を形成した。ヌードマウスを2群に分け、一方はARBの経口投与群とし、もう一方は無投与群とした。その結果、PC-3単独の腫瘍はARB投与の有無に関わらず、腫瘍径の相違はなかった。一方、間質細胞とPC-3の混合腫瘍では、ARB投与群の方に腫瘍増殖が抑制されていた。腫瘍を摘出してマウスCD31抗体を用い腫瘍内の微小血管数を測定したところ、ARB投与群は非投与群に比べて、微小血管数が減少していることを認めた。以上の結果は、Mol Cancer Therap.2005,4,1699-1709やCurr Cancer Drug Target.2005,5,307-323.にまとめて、発表した。
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