免疫抑制剤の進歩により急性拒絶反応の頻度は著明に低下し、短期における移植腎生着率は飛躍的に向上している。しかしながら、急性拒絶反応の頻度の低下に相反して免疫抑制剤の発達は過剰な免疫抑制状態を引き起こし、結果として、サイトメガロウイルスをはじめとするウイルス感染症の頻度が増加傾向にある。移植腎の長期予後に大きな影響を与える病態にchronic allograft nephropathy(CAN)があるが、サイトメガロウイルス感染症を中心としたウイルス感染症はCANの一因になっていると考えられている。しかしながらサイトメガロウイルス感染症をはじめとしたウイルス感染症が移植腎にどのような影響を与えているかは未だ解明されていない。また、最近腎移植後にヒトポリオーマウイルスの一首であるBKウイルスが問題視されている。今回、まず、サイトメガロウイルス感染症が診断された患者群(サイトメガロ陽性群)とサイトメガロウイルス非感染患者群(サイトメガロ陰性群)に分けた。これら二群において比較検討を行う前に急性拒絶反応と診断されたヒト移植腎生検標本とコントロール標本からマイクロダイセクション法を用いて尿細管間質を選択的に採取し、RNAを抽出しcDNAマイクロアレイ法により解析した。データの解析はGene Springを用いた。Normalization後present or marginalでfilterをかけると18356遺伝子が検出された。以上のように本研究では移植後腎生検組織より得られた拒絶反応の部位に特異的な遺伝子発現解析をGene tipを用いた網羅的解析により行うことを可能とした。
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