【目的】腎移植患者における抗HLA抗体の種類(抗class I、抗class II、IgG、IgM)が1年間にどのように変動したのかを解析した。 【対象・方法】腎移植患者22例から、1年間の間隔をおいて血清を採取し、抗HLA class Iおよびclass II抗体をFIow PRA法により検出した。2次抗体としてはFITC標識ヤギ抗ヒトIgG抗体または抗ヒトIgM抗体を用いた。 【結果】22例の患者のうち5例は、1年前と後でどの抗HLA抗体も全く検出されなかった。一方、IgG抗体が1年前後とも陽性であったのは9例であった。そのうち2例は再移植患者であり、いずれも術前から抗体陽性であった。これら9例の患者では1年前後でIgG抗体の種類(抗classI-1例、抗class II-7例、抗class I+class II-1例)は変わらず保たれていた。ただしIgM抗体については3例で抗class I抗体が陽性から陰性に転じた。IgG抗体が陽性から陰性に転じた例はなかった。IgG抗体、IgM抗体が陰性から陽性に転じた例はそれぞれ1例ずつ検出された。血清クレアチニン値については、IgG抗体が陽転した1例では増悪変化したが、他の例では抗体陰性・陽性に拘わらず、低値あるいは高値を維持した。 【結論】腎移植患者における抗HLA抗体の種類(抗class I、抗class II、IgG、IgM)は、多くの症例で一年間安定していた。抗体が安定している患者では血清クレアチニン値も低値あるいは高値で安定していた。
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