【目的】移植後に出現する抗HLA抗体は、慢性拒絶反応の原因の1つと考えられている。しかしその際どのような特異性あるいはどの程度のクロナリティー(オリゴ〜ポリ)を持つ抗体が産生されるのかは全くわかっていない。腎移植患者における抗HLA抗体のクローナリティーを解析するため、以下の実験を行った。 【方法】フローPRA:患者血清をHLA-class I分子結合ビーズと反応させた。ビーズを洗浄後、 FITC標識抗ヒトIgG抗体加えて反応させ、再び洗浄後、フローサイトメトリーを行った。ウエスタンブロット:ビーズに結合した抗体を酸溶出法により遊離させた後、すぐに中和し、SDS電気泳動または等電点電気泳動にかけた。分離された抗HLA抗体をPVDF膜に転写し、 HRP標識抗ヒトIgG抗体を用いたECL発光反応で検出した。 【結果】移植患者血清のフローPRA解析から、抗LAA-class I抗体強陽性血清1例、弱陽性血清1例および陰性血清2例を検出し、以下の実験に用いた。SDS電気泳動後のウエスタンブロット解析を行った結果、抗体陰性の2例にもIgGH鎖、L鎖に相当するバンドが検出された。フローサイトメトリーでは任意の蛍光強度を陰性と定めるが、発光反応を用いるウエスタンブロットでは非特異的に吸着した微量のIgG分子も検出してしまうと考えられた。症例間のバンドの強さは強陽性血清>弱陽性血清≒陰性血清であった。次に、ビーズから溶出した抗体を等電点電気泳動で分離し、同様にウエスタンブロット解析を行った。その結果、弱陽性血清、陰性血清については明瞭なバンドが検出されなかったが、強陽性血清については等電点の異なる複数のバンドが検出され、ポリクロナリティーが示唆された。この血清はHLA-class I single antigenビーズを用いたフローPRAでも広い特異性を持つことが確認された。
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