研究課題/領域番号 |
17591700
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研究機関 | 杏林大学 |
研究代表者 |
桶川 隆嗣 杏林大学, 医学部, 助教授 (70306679)
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研究分担者 |
奴田原 紀久雄 杏林大学, 医学部, 教授 (00143470)
東原 英二 杏林大学, 医学部, 教授 (00092312)
渡辺 和吉 杏林大学, 医学部, 助手 (60407054)
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キーワード | 膀胱癌 / メチル化 / FANCF遺伝子 |
研究概要 |
目的:浸潤性膀胱癌では、シスプラチンを中心とした多剤併用化学療法が有効であるが、有転移例の10〜15%程度である。臨床にて、化学療法前からシスプラチン耐性をもつ膀胱癌や化学療法中にシスプラチン耐性となり急速に進行する膀胱癌を経験する。シスプラチン感受性とシスプラチン耐性の獲得の機構にかかわる分子は不明であった.最近、ファンコニ貧血(FANC)-BRCA1癌抑制タンパク質経路は、シスプラチンなどのDNA架橋剤によって引き起こされる損傷のDNA修復に必要であることが解明された。我々は、浸潤性膀胱癌における癌抑制遺伝子のプロモーター領域のメチル化とピストン修飾とが遺伝子の発現にどのように関与しているかを検討した。 方法:T24、TCC、253J、WH、KYU(抗癌剤耐性癌細胞)において、FANCF遺伝子のDNAメチル化をメチル化特異的PCR(MSP)法で解析した。さらに、それぞれの細胞をDNAメチル化阻害剤である5-aza-2'-deoxycytidineで処理した後、RT-PCR法で遺伝子発現の変化を確認した。 結果:T24、TCC、WHの膀胱癌細胞ではFANCF遺伝子のCpGがメチル化されて不活化されていた。253JとKYUはメチル化を認めなかった。T24、TCC、WHを5-aza-2'-deoxycytidineで処理した後はFANCF遺伝子のmRNAとタンパク質の発現量が増加した。臨床50検体を解析した。正常な膀胱組織ではメチル化を認めなかった。Grade1の16検体のうち15検体(94%)、Grade2の22検体のうち14検体(64%)、Grade3の13検体のうち2検体(15%)で、Gradeの高い腫瘍組織では低い腫瘍組織と比べてメチル化を認めなかった。化学療法後の再発症例で検体採取が可能であった5検体では、メチル化を認めなかった。 結論:膀胱癌の進行の初期にはFANG遺伝子はメチル化によって不活性化されていて、この時期にシスプラチンにさらされると癌細胞が死滅するが、一部の腫瘍細胞では、FANG遺伝子がその後に脱メチル化され、シスプラチン耐性細胞が急速に増殖するようになることが示唆された。
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