研究課題
Hypoxia inducible factor (HIF)は低酸素状態で活性化される転写因子であり、vascular endothelial growth factor (VEGF)の産生を誘導するため、腎細胞癌における特徴的な血管増生の主要なメカニズムを担うものと考えられる。腎癌細胞株におけるHIF-αのサブタイプの発現とVHL遺伝子の変異との関連およびVEGFの発現との相関について検索した。9種類の腎癌細胞株を使用し、VHL遺伝子変異をダイレクトシークエンス法で検索した。4種でVHL遺伝子変異あるいはメチル化によると考えられる発現の消失が見られた。HIF-1αとHIF-2αの発現はRT-PCRおよびウエスタンブロット法で検索したところ、これら4種の株では野生型のHIF-1αの発現が消失していた。さらに野生型のVHLをもつ株でも1例においてHIF-1αの発現が消失していた。HIF-1αの発現の消失がプロモーター領域のメチル化に起因するものと考え、bisulfate処理したDNAのシークエンスにより評価したが、メチル化のパターンに大きな差を認めなかった。これら野生型のHIF-1αを有さない5種の株ではsiRNAによるHIF-2αの発現のノックダウンによりVEGFの産生が低下した。HIF-1αとHIF-2αの両者を発現する4種の株ではHIF-1αの発現のノックダウンによりVEGFの産生が低下した。HIF-1αを分子標的とすることによりVEGFの産生を低下させることができるものと考えられる。しかし、腎細胞癌では高率にHIF-1αの発現が欠失しているため、その場合はHIF-2αが分子標的になりうると考えられた。
すべて 2005
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