研究概要 |
(1)仙髄介在ニューロンによる膀胱収縮-弛緩の制御様式。(1)仙髄前根の電気刺激で逆行性に同定された節前ニューロンは全て排尿収縮時に活動が増大するニューロン(同相ニューロン)であるのに対し、逆行性に誘発されない介在ニューロンと考えられるものには、同相ニューロンの他に、排尿収縮時に活動が減少するもの(逆相ニューロン)がみられた。逆相ニューロンはBarrington核からの仙髄投射ニューロンには存在しないことから、Barrington核以外の入力により活動パターンが生成されるものと考えられた。同相性介在ニューロンにおいても節前ニューロンとの種々の相違点が見られた:介在ニューロンの多くは低圧時にも発火活動を示し、排尿収縮に先行する発火活動増大の開始は節前ニューロンより早く、膀胱弛緩開始に伴う活動減少の開始は節前ニューロンより遅い傾向にあった。(2)脳幹と仙髄節前ニューロンの結合様式。(1)Barrington核の連発刺激により、仙髄節前ニューロンに長潜時(15-49ms)のEPSPの他に、短潜時(4-6ms)の多シナプス性IPSPが誘発された。このような伝導時間の早いニューロンはBarrington核には存在せず、既報(Sasaki,2005)と合わせ、近傍の橋吻側網様体逆相ニューロンへの電流滑走により誘発されたものと考えられた。(2)Barrington核より尾側の脳幹の強刺激により、節前ニューロンに短潜時(4-10ms)の単シナプス性EPSPが誘発された。橋・延髄網様体を中心とする部位の刺激により短潜時の陰性細胞外電位が節前ニューロンの部位で記録され、細胞内記録の結果と合わせ、橋・延髄網様体から仙髄節前ニューロンに直接結合しているものと考えられた。これらの結果は、排尿を制御する脳幹からの下行路はBarrington核以外に2経路存在することを示唆した。
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