本研究の目的は一絨毛膜二羊膜性双胎妊娠無作為振り分けによる予後改善のための方策開発にあったが、要は双胎妊娠の重篤性を正しく理解し、適切な対応を取れるよう各周産期施設に適切な情報を提供することであった。その目的達成のために、できるだけ多くの医療機関に周知する必要があった。学術集会等を通じてアピールし、北海道産婦人科学会ならびに北海道産婦人科医会の全面的協力のもと、「北海道多胎妊娠登録制度」が2006年4月に開始された。全道各地から2008年3月現在で339例の双胎妊娠が登録された。膜性不明3例を除く、336例の胎盤膜性内訳は4例(1.2%)が一絨毛膜一羊膜性双胎、97例(28.6%)が一絨毛膜二羊膜性双胎、235例(69.3%)が二絨毛膜性双胎であった。不妊症治療後成立双胎が125例(36.9%、体外受精61例、クロミフェン35例、hMG-hCG29例)を占めた。339例中、168例について分娩週数の調査を行ったが、一絨毛膜双胎では二絨毛膜双胎に比し33週未満早産が多いことが明らかになった(9/46[19.6%]vs.11/122[9.0%])。単胎でのこれらは0.8%程度なので、双胎では早産が極めて多く、臨床的予後を悪くしている一大原因であることが明らかとなった。これら情報を登録施設で共有することにより、双胎妊娠が極めて予後不良であることが多くの周産期施設で認識され、基幹病院への双胎妊娠紹介が増加し、予後不良の改善に寄与している可能性が示唆された。症例数が不十分であったために、ランダム化比較試験には至らなかったが、十分、当初の目的が達成された。
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