研究概要 |
1 初年度に予定していたHOXB7,B13のダブルアンチセンス導入の製作を行った。B7およびB13のそれぞれのアンチセンスを導入した後、セレクションマーカーをneomycinとhygromycinとすることで同時ダブルアンチセンス導入細胞の単離を行った。コントロールにはmock細胞を作製しそれを用いた。シングルアンチセンスの導入に比較しダブルアンチセンスではその浸潤抑制率はほぼ2倍近く抑制され、結果的に浸潤率は0%となった。このことはHOX遺伝子の癌浸潤に対する影響は相加的であることを示しているとともに、2つ以上のHOXを制御すれば浸潤を停止させることができる可能性を示唆している。 2 子宮体癌においてはAN3CA株をいてこれに対してエストロゲンを投与しその後の時間および濃度依存的なHOXB13の変動について。細胞株から遺伝子を抽出しその発現量の差を比較した。すると時間依存では約8時間後に、濃度依存では約10の5乗モル濃度以降に急激な発現の上昇が認められた。このことは子宮体癌の浸潤に対するHOXB13の変動はエストロゲン依存的であることを示唆しており子宮体癌の進行自体がエストロゲン依存的であることと併せて考えるとエストロゲンの制御が癌の浸潤に大きな影響を与えることが理解される。 3 卵巣癌および子宮体癌の癌浸潤に重要なHOXB7およびB13について、HOXが転写因子であることから直接浸潤に影響を与えるいかなる遺伝子を制御しているかを調べるため、アンチセンスを導入した細胞としていない細胞からそれぞれ可能性のある遺伝子を抽出し、発現を比較した。検討した遺伝子はMMP2,EST-1,uOA, PAI, beta-catenin, E-cadherinである。その結果be-ta cateninおよびE-において著明な発現の差を認め、HOXはこれらの因子の発現量の変化を間接的に制御することで癌浸潤に影響していることが示唆された。 以上について、2004年米国癌学会、2005年日本産科婦人科学会総会学術講演会で報告し、2006年米国癌学会でも2報の採用が認められ報告予定である。
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