研究概要 |
我々はこれまで受精過程における精子、卵子の動態を細胞骨格の変化を中心として報告してきた。今回我々は東北大学の倫理委員会に承認を得た上でヒトにおける卵子の体外成熟を試み、その細胞骨格について検討した。ヒト卵子培養にはP-1mediumを改変した2001年のCekeleniakらの報告に基づき培養液を作成、37℃、5%CO^2大気中にて約24時間の体外成熟培養を行った。ヒト卵子は3例の多嚢胞性卵巣症候群の腹腔鏡下手術時に小卵胞を穿刺し採取した。1例目は年齢25才で採取卵8個、体外成熟後metaphase II (MII)卵6個Germinal vesicle (GV)卵1個残り1個は変性していた。2例目は26才で採取卵12個、体外成熟後MII卵2個GV4個残りは変性であった。3例目は33才で採取卵4個、体外成熟後MII卵1個GV卵2個変性1個であった。これら体外成熟率は37.5%であった。これらのヒト卵子をSimerly, Schattenらが報告した方法により細胞骨格を固定、微小管、核につき免疫蛍光染色を行い観察した。これら体外成熟した卵子でもMII卵においては紡錘体の微小管の形成、染色体配列の異常などは免疫蛍光染色では認められなかった。また卵子を固定前に体外培養しつつライブイメージを観察したが観察に用いた卵子は6個とも変性に至り紡錘体の形成などにつき新たな知見を得ることはできなかった。今回のヒト未成熟卵の体外成熟培養は若年者の卵子においては体外受精などの生殖医療に使用できる可能性が示唆されたが、培養環境にっき検討が必要かと考えられた。また今後同様に体外成熟培養を行い加齢による卵の細胞骨格に関する研究を行う予定である。
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