研究課題
本研究では、ヒト子宮内膜症組織を免疫不全(SCID)マウスに移植した子宮内膜症異種移植モデルを用いて、COX-2選択的阻害薬の子宮内膜症への効果を、発育、増殖、血管新生、およびアポトーシスへの影響を通して評価することを目的とした。同意が得られた患者より、卵巣チョコレート嚢胞摘出手術時に嚢胞壁の一部を採取し、6〜9週齢の免疫不全マウスの腹腔内に移植した。移植時にマウスの両側卵巣を摘出し、摘出直後からエストラジオールの継続投与を行った。これをCOX-2選択的阻害薬(NS398、10mg/Kg体重/日)投与群(治療群、n=12)とプラセボ投与群(プラセボ群、n=11)に無作為にわけ、移植日より連日経口投与した。移植56日後に組織を摘出し、表面積の変化、免疫組織化学染色にて増殖能(Ki67を指標としたproliferation index法)、血管新生(von Willebrand Factorを指標としたMicrovessel density法)、アポトーシス(single strand-DNA抗体によるApotosis index法)およびvascular endothelial growth factor(VEGF)とCOX-2蛋白の発現の変化(Labeling index法)について評価した。統計学的解析には、Mann-Whitney U testを用い、5%を有意水準として検定を行った。移植組織片のマウスへの生着率は100%であった。また、NS398のマウスへの影響(副作用)は認めなかった。摘出組織の表面積は、治療群がプラセボ群よりも減少していた。増殖およびアポトーシスについては、両群間に差を認めなかった。血管新生は治療群がプラセボ群に比較して有意に抑制され、移植子宮内膜症組織中のVEGFおよびCOX-2の発現も、治療群がプラセボ群よりも有意に低下していた。以上より、COX-2選択的阻害薬が血管新生を抑制することにより、免疫不全マウスに移植した子宮内膜症組織の発育を抑制することが判明した。この結果は、COX-2選択的阻害薬が子宮内膜症の発症や進展を抑制し、同薬が子宮内膜症の治療薬として奏功する可能性を示唆するものである。
すべて 2006
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Fertility and Sterility 86, Suppl 3
ページ: 1146-1151
The Tohoku Journal of Experimental Medicine 210
ページ: 175-188