子宮腺筋症における内膜腺管間質の筋層内進入を浸潤のモデルとして網羅的分子生物学的解析を行う目的で今年度は手始めに子宮内膜間質肉腫(ESS)と正常子宮内膜の間質細胞との間で差次的発現遺伝子解析をおこなった。用いた症例は58歳のESSの肺転移例で正常子宮間質細胞は40歳の子宮筋腫症例から得た。腫瘍組織はそのまま、また正常内膜は組織マイクロダイセクション法を用いて間質細胞のみを採取してmRNAを抽出し、T7RNA polymeraseを用いたRNAの増幅法にてそれぞれのRNAを増幅した後、Suppression Subtractive Hybridization法にて両者の細胞に発現する遺伝子量を網羅的に比較検討した。その結果、正常子宮間質細胞に比べてESSで多く発現している遺伝子として浸潤性肺癌に高発現すると言われているMALAT-1を、逆にESSに比べて正常子宮間質細胞に多く発現している遺伝子としてPlacental CS0D1066YJ10(正常胎盤発現遺伝子ライブラリーに登録されている機能未知の遺伝子)を同定できた。これらの遺伝子の発現状態をin situ hybridization法で確認するとMALAT-1はESSや正常間質細胞(増殖期)に特異的に、またPlacental CS0D1066YJ10は正常子宮間質細胞(分泌期)に特異的に発現していることがわかった。以上よりESSは増殖期における子宮間質細胞の特徴を有する腫瘍であることがわかった。
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