研究概要 |
1.子宮頸癌由来細胞株のHPV DNA検出と型判定 当科で初代培養樹立した細胞株及び各施設から分譲された細胞株を用いてHPV DNAの検出を行った。L1領域を用いるコンセンサスプライマーを用いて目的DNAの増幅を確認し、RFLP法で型判定したところ、HPV 16が陽性となった細胞株がCaSki, SKG I, SKG IIIa, QG-U, TC-YIK, Opt48,TCO-1であった。またHPV 18力暢性であった細胞株は、HeLaS3, TOM-2, SKG-II, Opt60a, Opt60b, Medamaであった。HOKUGではHPV 56が検出された。研究分担者である吉川が班長を務め、沖が事務局を務める文部科学省重点領域研究「HPV感染と子宮頸部発がんに関するコホート研究」では905名のCIN1/2患者がエントリーし、現在570名が解析可能で中間解析を行っているが、このなかでHPV 16は13%、HPV 18は3%に過ぎず、両者の存在比が顕著に異なることはCIN 3,浸潤癌を経て更に樹立過程でのSELECTIONが興味深い。 2.発癌とHLA Class II 前出のコホート研究で興味深い結果を得たので報告する。この研究ではCIN1/2を有する登録症例でのHLA Class IIアレルのタイピングを行っているが、この中でHLA DR12, DR13を有する症例ではこれらを有しない症例に比して有意にCIN 3への進展がしにくい(抑制される)結果となった。子宮頸癌、CINとHLA DR13は発癌に関して抑制的という論文は多くあるが、本コホート研究のような大規模なdataは存在しないため今後の研究結果が待たれるところである。 3.HLA検査 One Lambda社製microSSP kitを用いてHLA Class I(HLA A, B, C)とHLA Class II(HLA DR, DQ)について細胞株のDNAを抽出してgenotypingを試行した。このkitは非常に調整が難しく細胞株からDNAが大量に得られても判定が困難な細胞株が多かった。特にClassIIに関しては詳細な検討が難しいことが分かった。タイピング可能だったものとして、SKG-IIがHLA A24, B47, B52、HOKUG A2, A26, B35, B71, C09, C07、CaSkiがA02, A03, B07, B37, Cw0701、TOM-2はA24, B52が確定された。特にA locusでA02とA24を併せ持つものがあれば非常に多くの日本女性をカバーできるはずであるが、未だその株は見つかっていない。細胞株とPCRを調整しながらtypingを継続することにしている。 4.今後の展開 HLAのgenotypingについては、精度を高めて再検してHPV型とHLA型のaffinityについて今後も検討していく予定である。コホート研究の成果と今回の研究の結果から、まず患者検体を用いてHPVのtypingとHLAのtypingを模索することを主題とした特定領域研究「子宮頸部発がんの宿主要因としてのHLA遺伝子多型に関する民族疫学的研究」をスタートした。癌患者でのHLAとHPVの型の把握を優先する。
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