研究課題
われわれは子宮内膜においてコレステロール硫酸(cholesterol sulfate ; CS)が着床期に一致して一過性に増加すること、かつCSの増加は着床周辺部に著明であることを見出したことを端緒として、CSの着床における機能解析を行ってきた。一方、最近CSは核内受容体(retinoic acid-related orphan receptor ; ROR)を介するリガンドとしての生理活性を有することが報告され、CSが何らかの遺伝子発現調節機能を有する可能性が示唆されている。そこで、本研究では子宮内膜およびトロホブラストに対するCSの作用を遺伝子発現調節機能を中心に検討した。その結果、1.子宮内膜細胞培養系にCSを添加するとその培養液中のプラスミン活性のみならず、MMP活性も抑制することが明らかとなった。これはCSがプラスミン活性の抑制を介してMMP活性を抑制することによりin vivoにおいてCSがプロテアーゼ活性調節に重要な役割を演じていることを示唆している。2.子宮内膜細胞においてCSはRORの標的遺伝子と考えられているRevErbの遺伝子発現を促進することが明らかとなった。また、CSはその受容体であるRORの遺伝子発現も促進することも明らかとなった。3.トロホブラストの細胞株であるJEGにおいて、CSはプロゲステロン産生を促進することが明らかとなった。その機序として、プロゲステロン産生に関与する酵素の発現へCSの作用を検討したが、明らかな促進作用を認めず、現在、コレステロール輸送タンパクに対する親和性などを検討中である。
すべて 2006
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Endocrine Journal 53(4)
ページ: 485