昨年度に引き続き、種々の抗癌剤の顆粒膜細胞に与える作用の強度の差異を検討した。抗癌剤は、paclitaxel、docetaxel、etoposide、cyclophosphamideである。この検討は、マウスに対する抗癌剤投与すなわちin vivoの系とマウスから取り出した顆粒膜細胞を培養してのin vitroの系の両方で行った。B6C3F1雌マウスに生後6、7週で種々の抗癌剤を種々の用量で腹腔内投与し、9週で卵巣を摘出、連続切片を作製しアポトーシスの有無につき観察した。次に、抗癌剤投与がアポトーシス関連遺伝子に与える影響につき検討した。種々の抗癌剤を投与した4週齢のB6C3F1雌マウスにおいて、顆粒膜細胞、卵細胞でのbax遺伝子の分布を免疫組織化学的に観察し、対照群との比較によりbaxの関与の有無を検討した。Bc1-2タンパク、カスパーゼの分布についても同様に抗癌剤投与群と対照群との比較を行った。bc1-2遺伝子群では、bax遺伝子でコードされたタンパクBaxがアポトーシスを起こしつつある卵胞で強く発現することがマウスにおいて免疫組織化学的に示されたが、さらにマウスにおいてBaxの欠如した卵巣で卵巣の機能が延長することが示された。Bc1-2は卵胞アポトーシスを抑制することが知られているが、さらに卵細胞内にbc1-2を過剰発現させるとその卵胞の閉鎖が抑制されることも示された。逆にbc1-2遺伝子が欠如したマウスでは、卵細胞および原始卵胞の数が減少した。
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