研究課題
胎盤は母体と児の物質交換、ガス交換の場として胎児の発育および成熟に必須の役割を果たしており、胎盤の低形成や機能不全は子宮内発育遅延(IUGR)、胎児低酸素症を引き起こし、予後不良な母児転帰の主要な原因となっている。本研究ではまず、胎盤の形成調節および機能制御機構に母体骨髄由来単核球細胞が関与する可能性を想定し、その検証を試みた。すなわち、蛍光色素Green fluorescent protein(GFP)を全身に発現するGFPトランスジェニックマウスから骨髄由来単核球細胞を採取し、形成過程にあるマウス胎盤にmicroinjectionした。胎盤が形成された後にこれらの細胞が胎盤構造に生着していることを確認し、さらに生着した細胞の一部が胎盤を構成する絨毛細胞の分化抗原を発現していることを見出した。またGFPトランスジェニック雌マウスに非トランスジェニック雄マウスを交配し、妊娠18.5日目に開腹して非トランスジェニック胎仔の胎盤中に、母獣骨髄由来細胞が存在することから、これらが胎盤形成に何らかの関与をしていると考えた。また、本研究では胎盤の形成や機能の調節に関与する分子として、グルココルチコイド代謝酵素11βHydroxysteroid dehydrogenase type2(11βHSD2)に注目し、ヒトIUGR症例やマウスIUGRモデルから採取した胎盤組織における発現を検証した。母獣摂食制限によるマウスIUGRモデルにおいては11βHSD2の胎盤における発現が増加し、11βHSD2が母体ストレスによるグルココルチコイドの曝露から胎児を保護していると考えられたが、ヒトIUGR症例では胎盤における11βHSD2発現の減少が見られ、IUGRにおける胎盤機能の変調に関与している可能性が示唆された。本年度の成果を踏まえ、来年度以降さらに胎盤の形成及び機能の調節機序に関して検討する予定である。
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