| 研究概要 |
哺乳類の分娩にはオキシトシン-オキシトシン受容体(OT-OTR)系が重要な役割を果たすと考えられているが、OTR欠損マウスは正常に分娩が進行することからOTR欠損マウスの分娩を更に詳細に検討した結果、OTR欠損マウスではLPS受容体であるCD14の発現が有意に増加していることを発見した。そこで我々はOT-OTR系及びそれらを代償する因子としてのLPS感受性の分娩に与える影響を検討した。その結果、子宮筋のLPS感受性が亢進していることが確認された。OTR欠損マウスと野生型マウスではTNF-α産生に差はなく、サイトカインに依存しない未知の内因性リガンドによるプロスタグランディン合成系がOT-OTR系を代償している可能性が考えられた。
OTR欠損マウスの分娩における発現遺伝子プロファイルを更に詳細に検討するために、Subtractive Suppressive Hybridization法(以下SSH法)を用いてOTR欠損マウスで特異的に発現している遺伝子の同定を試みたところ、遺伝子は総数176個が得られた。このうち、73はリンカーコンカテマーなどartifactであった。残りの103の遺伝子のうち、OTRKOからカルシウム依存性情報伝達機構に関わる遺伝子群、特にJunD,FKbp,Tpt-1,Dscr,IGFbp7などのCalcineurin関連遺伝子が多数得られた。
CalcineurinはIL-2などサイトカインの発現調節や免疫応答に関与する因子であり、カルシウム依存性情報伝達機構系がOTRKOの分娩時子宮筋で活性化可能性が考えられる。また、早産の治療薬としてカルシウムチャンネル拮抗剤が良好な成績を収めており、カルシウムによるシグナル伝達系が分娩に影響している蓋然性が高く、in vivo gene transferの系などを用いて現在Calcineurinの系を阻害する実験系を構築して検討した。
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