研究課題/領域番号 |
17591738
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
稲垣 純子 岡山大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 助手 (90271056)
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研究分担者 |
松浦 栄次 岡山大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 助教授 (20181688)
中塚 幹也 岡山大学, 医学部・歯学部附属病院, 講師 (40273990)
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キーワード | ラミニン-1 / 抗ラミニン-1抗体 / 子宮内膜症合併不妊症 / 糖鎖抗体 / 反復流産 |
研究概要 |
(1)子宮内膜症合併不妊症患者にみられる抗ラミニン-1抗体の詳細な認識部位の解析を行ったところ、この患者群にみられる抗体の多くは、マウスラミニン-1の糖鎖部分を認識していることが明らかになった。さらにその一部は、α-Galエピトープ(Galα1-3Gal-4GlcNAc-R)と呼ばれる糖鎖構造を認識する自然抗体、つまりαGal抗体であることが分かったが、その多くはラミニン-1をα-ガラクトシダーゼ処理しても活性が認められることから、糖鎖の他の構造を認識している可能性が示唆された。また一部の患者に、糖鎖を切断したγ1 chainにも反応性が見られることからγ1 chainのペプチド部分にも反応する抗体が存在することが明らかになった。現在、糖鎖構造およびγ1 chain中のエピトープ構造の特定を行っている。 (2)マウス受精卵あるいは胚盤胞を回収し、ラミニンをコートしたプレートを用いたin vitro培養系で、抗ラミニン-1抗体強陽性の子宮内膜症合併不妊症患者血清から精製したIgGクラスの特異抗体、β1 integrin抗体、市販されているラミニン抗体、当研究室で樹立したIgMモノクローナル抗ラミニン-1抗体を使い、胚の発育、接着、増殖伸長への影響を比較検討している。例数はまだ少ないが、患者血清から精製したIgGクラスの特異抗体は、胚のhatchingには影響を与えないが、その後の増殖伸長を阻害する傾向が見られた。 (3)ラミニン-1はガンの増殖、浸潤に関与する糖タンパク質であり血管新生を促進する分子内の生理活性ペプチドも複数同定されている。月経血の逆流により子宮内膜が腹膜などに生着することが発症、発達に関係すると考えられている子宮内膜症においてもこの分子が関与している可能性がある。そこでα1 chainのG domain内で強い細胞接着活性を持ち、細胞の伸長を促進し、ガンの増殖、転移にも深く関与していることが報告されているAG73ペプチドと、血管新生を促進することが知られているγ-1 chainのC16ペプチドに対するモノクローナル抗体を現在作製している。樹立したモノクローナル抗体を使い、妊娠の成立、継続または胎児の発育に及ぼす影響、さらには子宮内膜症モデルを作製し、移植片の血管新生や細胞の接着、浸潤、増殖への影響について解析する予定である。
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