研究概要 |
Pregnane X receptor(PXR)は新しい核内受容体であり薬物代謝・排泄機構を司る調節因子として知られている.我々はPXRや標的遺伝子であるcytochrome P450 3A(CYP3A)が子宮体癌組織で発現しており組織内のステロイド・Xenobiotics代謝に関与していることを報告してきた.今回は子宮体癌由来培養細胞でのPXRを介した薬物耐性因子の一つであるmultiple drug resistance 1(MDR1)発現の調節機構を検討した. まずIshikawa及びHEC-1細胞を用いていくつかの抗癌剤がPXRのリガンドとなるか,またこれらPXRのリガンドである薬物による転写誘導能がMDR1とCYP3A4の上流にある二つのPXR responsive element(PXRE)により異なるかを検討した.次にこれらのリガンドが標的遺伝子(MDR1,CYP3A4)やPXRの発現を誘導するか検討した.更にこれらのリガンドによるPXR/RXR heterodimerの各PXREへの結合やPXR/RXR/PXRE複合体へのcoactivatorの結合の違いについて検討した. 結果は,CisplatinとpaclitaxelがPXRを介した転写を誘導し,以前よりPXRのリガンドとして知られているphthalateやprogesteroneなどと比較して特にMDR1上流のPXREを介した転写を強く誘導した,Carboplatinやdocetaxelにはリガンド作用はなかった.これらの薬物によりMDR1の発現が増加したが,PXRの発現は抑制された.リガンドによりPXR/RXR heterodimerの各PXREへの結合には差はなかったがPXR/RXR/PXRE複合体へのcoactivatorの結合は異なるものであった. 以上より子宮体癌細胞においてcisplatinやpaclitaxelはPXRを介してMDR1の発現を誘導することから,PXRを介した薬剤耐性機構の存在が示唆された.またこのPXRを介したMDR1発現制御はリガンド及びpromotor特異的なものと考えられた.
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