研究概要 |
HPV18型陽性子宮頚癌由来HeLa, SW756細胞はともに数十個のHPV18ゲノムの組み込みを有しており,このうちE6E7の転写がみられるのは1コピーのみで,他のLCR内CpG部位はメチル化されている。このため,siRNAによるDNAメチル化とヒストンH3メチル化誘導を確認することは困難である。一方,SiHa細胞は2コピーのHPV16ゲノムを染色体内に組み込んでおり,どちらもLCR部分のCpGは非メチル化状態でアクティブに転写が行われているのでDNAのメチル化とヒストンH3のメチル化の解析に適している。そこで,まずsiHA細胞を材料に研究を開始した。 siRNAによるDNAメチル化とヒストンH3メチル化誘導確認モデルとして,プロモーター欠失GFP発現ベクター,pEGFP-1にLCR配列(Bam HI fragment)を挿入したコンストラクトをHPV陰性子宮頚癌由来C33a細胞に遺伝子導入し,stableな発現クローンを選択した。HPV16 LCR領域内にあるメチル化シチジンをカバーするように11種類のsiRNAを作成した。これらを用いてメチル化感受性制限酵素によるCpG部位メチル化の検出実験およびクロマチン免疫沈降法によるメチル化ヒストン(H3-K9)の検出を試みたが良好な結果がまったく得られなかった。 この間,研究の契機となった論文「Induction of DNA methylation and gene silencing by short interfering RNAs in human cells : Hiroaki Kawasaki, Kazunari Taira」に不正捏造の事実が明らかとなった。 現在は,HPV16,18型それぞれで新たなアルゴリズムによって選定したE6を標的とするsiRNAを用い,E6発現抑制と増殖抑制効果の最も高い配列を決定し,新たな特許申請を行うべく準備を行っている。
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