卵巣癌特異的オンコリティックアデノウイルスAdE3=IAI.3Bは、単独ではヌードマウスモデルにおいて一時的に著しい抗腫瘍効果を示すものの、全ての腫瘍に再発が認められることが明かとなった。このため、293細胞あるいはA549細胞をAdE3-IAI.3Bのキャリアー細胞として用いると、ヌードマウスモデルにおける腫瘍の再発が認められず、in vitroの実験において坑アデノウイルス中和抗体による感染抑制が解除されることが明かとなった。Syngeneicな(C57BL/6 x C3/He)F1マウス由来の高転移性の卵巣癌細胞株OVHMを用いてAdE3-IAI.3Bの感染したキャリアー細胞である293細胞およびA549細胞の抗腫瘍効果を検討した。AdE3-IAI.3B単独あるいはAdE3-IAI.3B感染キャリアー細胞を投与しても抗腫瘍効果は示さなかった。メモリーT細胞への抗原認識を期待してUVで不活化したアデノウイルス10^7vpを皮下注射し3〜4週間後に、AdE3-IAI.3Bを250vp/cell感染した200Gy放射線照射後のA549細胞を8〜10mmのOVHM皮下腫瘍に7.5x10^6 cell/mouseを6回腫瘍内注射したところ、腫瘍は15日後に完全に消失しさらに150日後においても再発は認められなかった。こうして治癒したマウスに、再度OVHMを10^6個、皮下移植したところ全てのマウスにおいて腫瘍形成は認められず、腫瘍免疫が誘導され腫瘍拒絶が確立していることが明かとなった。tumor vaccinationの可能性を検討するためOVHMを80Gyで放射線照射して腫瘍形成能を消失させた後、10^6個皮下注射し、2週間後にOVHMを皮下移植したところ腫瘍発育遅延が認められたが腫瘍拒絶は認められなかった。このため、キャリアー細胞治療後に認められる腫瘍拒絶は、単にOVHM癌細胞が死滅することによるものではなくオンコリティックアデノウイルス感染によって誘導されることが示唆された。E1Aプロモーターを削除するため491-552bpおよび404-552bpを削除し、その位置にIAI.3Bプロモーターを挿入したAdE3-491-IAI.3B、AdE3-404-IAI.3B、さらにはそれぞれのfiber knobにRGD motifを挿入したAdE3-491-IAI.3B-RGD、AdE3-404-IAI.3B-RGDを作成し、抗腫瘍効果を検討したところ、削除する位置によって、あるいはRGDを負荷することによってそれぞれ抗腫瘍効果に差が認められなかった。このため、wild type adenovirusができないという点においてAdE3-404-IAI.3Bが最も適当と思われた。
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