研究概要 |
双胎形成のメカニズムは未だに不明な点が多く、1卵性双胎であるにも関わらず表現型の異なる例が存在する。その原因を知ることは、表現型と遺伝子型との関連を知ることでもある。そこで、1卵性でありながら表現型の異なる7例の双胎および胎児内胎児の2例を対象として、双胎形成のメカニズムとその異常に関する分子遺伝学的検討を行った。実際には、症例1は心奇形の有無、症例2は単一臍動脈の有無、症例3は多趾の有無、症例4は母斑の位置、症例5は結合双胎で口唇裂の位置、症例6は双胎の一児が無心体双胎、症例7は妊娠初期からの発育差に差異がみられた。細胞および分子遺伝学的解析の結果、これら7例はいずれも遺伝子型が同一であり1卵性双胎であった。染色体核型は正常(46,XXまたは46,XY)で、いずれのアレルも両親由来であった。無心体双胎のアンドロゲンレセプター多型はヘテロ接合であり、正常児はランダムなX-inactivationパターンを示したが、無心体児は極端なskewed X-inactivationパターンを呈した。以上より、双胎形成に影響する因子として1.胎児期の環境、2.双胎形成過程における不均等分割、3.双胎形成時期の遅延、および4.双胎形成後の後成的遺伝子修飾機序の存在が考えられた。無心体双胎におけるX-inactivationパターンの不一致からは、内細胞塊から分裂した細胞数の双胎間での相違が想定された。一方、胎児内胎児の症例8は胎児腹腔内に双胎児を認め、症例9は頭蓋内に胎児を認めた。細胞および分子遺伝学的解析の結果、いずれも遺伝子型が向一であり1卵性双胎であった。さまざまな遺伝子解析により、症例8はゲノム刷り込み現象の再構築が完了する以前に胎児が胎児内へ取り込まれたもの、また症例9はゲノム刷り込み現象の再構築が完了したのちに、胎児が胎児内へ取り込まれたものと考えられた。
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