研究課題
<背景>超音波検査で一絨毛膜性と診断されれば、双胎間輸血症候群(Twin to Twin Transfusion Syndrome : TTTS)のリスクを念頭に置いた管理が必要である。現在、臨床におけるTTTSの評価にはQuintero分類が用いられているが、これは病態が完成した状態での評価である。TTTSの発症を推定するマーカーが同定され、臨床において応用できれば、TTTSの管理および病態解明への貢献は大きい。一方、母体血漿中に流入する胎盤由来の核酸成分(cell-free DNAおよびcell-free mRNA : cff-DNAおよびcff-mRNA)の定量化は、分子遺伝学的に胎盤機能を知る手段として注目されている。最近、TTTSに対する胎児鏡下胎盤吻合血管レーザー凝固術後に母体血漿中のcff-DNAが持続的に上昇していることが報告され、これは胎盤からの流出に起因しているものと考えられる。すなわち、遺伝子発現を反映するcff-mRNAの定量化は、TTTSに伴う胎盤機能の推定法になりうることが期待される。そこで本年度は、以下の2点にターゲットを絞り研究計画を遂行した。研究1)前年度からの研究を継続し、双胎間で表現型の異なる一卵性双胎について分子遺伝学的検討を加え、多胎形成の異常とその問題点を明らかにした。本年度は新たに2例の表現型の異なる一卵性双胎(結合双胎1例および無心体双胎1例)について検討を加えた。いずれも、遺伝子型解析で一卵性であることが確認された。とくに、無心体双胎では、正常児にはランダムなX不活性化を認めたが、一方の無心体児には極端なX不活化の偏りを認めた。今回のX不活化パターンに関する結果は、以前解析した無心体双胎の症例でも認められている。これは、本病態の発生機序の一端に、受精胚の不均等分割が関与していることを裏付ける結果として注目された。以上の解析結果については、現在論文準備中である。研究2)TTTSのリスクを推定する分子マーカーとして、母体血漿中へ流入する胎盤特異的mRNA定量化の有用性について検討した。一絨毛膜性双胎を伴う妊婦17例について、妊娠12週-22週に母体血6ccを採取した。TTTSを発症したものをTTTS群(n=5)、発症しなかったものを非TTTS群(n=12)とした。従来通り、胎盤特異的遺伝子であるhPL mRNAをターゲットにして定量的リアルタイムRT-PCRを行った。TTTS群におけるcff hPL mRNAの流入量は207.4±66.8copy/ml(mean±SD)、他方の非TTTS群におけるそれは139.7±61.8copy/mlであった。両群間に推計学的有意差が認められた(p=0.035)。以上より、cff-mRNAの定量化は、TTTSの発症を推定しうる分子マーカーとして有用であることが考えられた(論文投稿中)。
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