研究概要 |
実験2年目は、pretermの羊胎仔を用いて慢性実験モデル(臍帯圧迫モデル)での脳組織の分析を行った。 実験1年目は、羊胎仔を用いて間欠的低酸素血症モデルを作成した。妊娠108-110日(term=147日)の妊娠羊の胎仔を用いた。間欠的酸素血症は間欠的臍帯圧迫(umbilical cord occlusion ; UCO)で作成し、90秒間の臍帯圧迫を7〜11回/日、30分毎に4日間を通じて行った。90秒の臍帯圧迫で、変動性-過性徐脈を示し胎児心拍数は平均約150bpmからでは約80bpmまで低下し、一方胎児血圧は上昇した。膀帯圧迫を解除すると、胎仔心拍数は回復、血圧も次第にコントロールレベルまで低下し次第に回復した。胎仔動脈血の分析では、臍帯圧迫に伴い、PaO_2、pHは低下、PaCO_2は上昇したが、その30分毎の間欠的圧迫で、圧迫期間中に進行するアシドーシスは認めなかった。 Day4の実験終了後に胎仔をsacrifice、頚動脈からformalinを還流し胎仔脳を固定した。胎仔脳組織は、H&E、GFAP、HLADRの免疫染色を行った。また、脳障害の程度を、実験に関与しない神経病理医がBrain injury score (BIS);0-normal,1-minimal,2-mild,3-moderate to severeを用いて評価した。実験群において全ての胎仔がminimal injury (minimalに加えischemic neurons in frontal and/or parietal cortex)を示した。実験群のBISは1.6±0.2であり、対象群のBISは0.4±0.3に比べ有意に高かった。(non-paired t-test, P<0.01) 今回の実験では90秒間、30分おきのUCOで進行するアシドーシスを伴わない急性低酸素血症を作成し、実験群では胎仔脳のsubcorticalの免疫染色の増強、cortexのischemic neuronsを認めた。繰り返す臍帯圧迫が脳障害を起こす可能性が示唆された。
|