石岡、梅村は、卵巣明細胞癌細胞株のうちTaya株がTaxane系に対して比較的耐性であるが、新規プラチナ製剤Oxaliplatinに対して感受性を示し、そのメカニズムとしてアポトーシスが関与することを示した。 石岡は、RTPCRを用いた検討により、この明細胞癌細胞株で脂肪組織より分泌されるサイトカインであるアディポネクチンの受容体が発現していることを見出した。 血中アディポネクチン濃度と子宮体癌の予後に相関があることが近年報告され、アディポネクチンが癌の発育にも関与することが考えられている。そこで、まず梅村は臨床手術検体を用いて明細胞癌組織でアディポネクチン受容体が発現しているか検討した。1990年以降2000年までの50例の明細胞癌組織の約40%でアディポネクチン1ないし2受容体が発現しており、アディポネクチン2受容体発現患者で予後がよい傾向にあることを見出した。アディポネクチンはいくつかの細胞でアポトーシスを誘導することがしられており、我々は、アディポネクチン受容体を発現している明細胞癌患者では、抗癌剤に対してアディポネクチンを介したアポトーシスを引き起こしやすく、予後良好の一因となっていると考えた。一方、抗癌剤耐性はアポトーシス耐性と関連し、そのアポトーシス抑制の機構として、以前より抗アポトーシス蛋白Bag-1の役割に注目していたが、Bag-1に対するアンチセンスオリゴの投与により抗癌剤耐性が回復することを見出した。更にその機構として、プロテインアレイを用いた検討により、PTENを中心としたMAPK系への関与が示された。明細胞癌で普遍的にその機構が制御され抗癌剤耐性を示すのか、そしてそこへのアディポネクチンの関与につき、今後検討を進めていきたい。
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