研究概要 |
ヒトの細胞性免疫はT細胞とHLAと抗原ペプチドの3分子の親和性に依存している.我々は,ウイルスが癌化の機序に関与している事が明らかとなっている子宮癌でこの3分子の解析を行なってきた. 本年度はペプチド分子以外の解析での成果がまとまり,論文として発表した:Int J Gynecol Cancer.2007 Nov-Dec;17(6):1314-21.その内容は,合計81人の子宮癌患者(62例がcervical intraepithelial cancer,19例がinvasive cervical cancer)について遺伝子背景としてのHLA-A,-B,-C,DRB1とDQB1について解析した.その結果,HLA-DRB1*0901陽性の子宮癌患者の頻度が健常人群と比較して増加していた.また,前年までに解析したHPV genotype 16陽性である患者群をグループ化して他のグループと比較すると,HPV16陽性のCIN III/ICC患者でHLA-DRB1*0901-DQB1*03032 haplotypeを持つグループは統計学的に有意差を持って増加していた.また,病変組織から抽出したmRNAをもとに,T細胞が病変で活性化しているかどうかをRT-PCR法で解析したところ,病変では主にCD4陽性のヘルパーT細胞のメッセージが認められた.この事からCD4陽性T細胞と特定のHLAクラスII遺伝子背景とHPV16タイプの持続感染が,子宮癌の進行と関連している可能性が高い事を明らかにすることが出来た.
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