研究概要 |
ヒトの細胞性免疫はT細胞とHLAと抗原ペプチドの3分子の親和性に依存している.我々は,ウイルスが癌化の機序に関与している事が明らかとなっている子宮癌でこの3分子の解析を行なってきた.まず,子宮頚部病変(dysplasia,carcinoma)を持つ日本人患者においてMHCと疾患の相関を解析した。また,特定のHLAアリルと疾患の進行にどのような免疫学的機序が介在するかを知るために,HLA-DRに結合するアミノ酸モチーフをHPVE7から探索し,その合成ポリペプチドを用いて,患者T細胞の反応性を解析した。その結果,89例の子宮病変を持つ患者の52.2%からHPV16DNAが検出された。HPV16DNA陽性の子宮癌患者のHLA-DRB1*0901の頻度は統計学的な有意差をもって増加していた。HPV16の癌遺伝子として知られているE6/E7リコンビナント蛋白に対して半数の患者が抗体を持っていた。HPVE7をコードする合成ペプチドシリーズを作成し,HLA-DRB1*0901分子との結合性を調べたところ,DSTLRLCVQSTHVDIRTLEの結合性が最も高かった。これらの結果から,子宮癌とHLAクラスII分子が相関を持つのは,抗原であるHPVに対するヘルパーT細胞の関与に差がある事によるものと考えられた。したがって,HPV16HPVE7DSTLRLCVQSTHVDIRTLEペプチドワクチンを用いてヘルパーT細胞の活性化を行うことが,子宮癌への進行を予防することにつながるものと考えられた。
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