研究概要 |
減数分裂、受精、分化における、ヒト卵子特異的リンカーヒストンH1(osH1)の発現、機能を解析し、またその臨床診療への応用を試みた。 (1)抗osH1ウサギポリクローナル抗体を用いたGV期および受精後桑実胚までの受精卵の免疫染色では、GVから2細胞期までは核クロマチン又は精子頭部に免疫染色で反応が見られたが,4細胞期以降見られなくなった。また同じ抗体を用いてICSI非受精卵(48時間以内に前核が確認できず、分割もなかった卵子)を染色したところ、精子頭部膨化が起こっている卵では全てosH1が精子のクロマチンへ取り込まれていたが、少数であるが非膨化精子核においてもosH1の反応が見られ、本蛋白は精子の卵子侵入後ごく初期から精子核に取り込まれることが確認された。 (2)GV期、非受精卵のosH1 mRNA発現をRT-nested PCR法にて検討するとともに、osH1cDNAをクローニングして陽性コントロールを作成することにより、M-II期と4細胞期でosH1 mRNA量を比較した。受精後、4細胞以降には蛋白レベルでは、核クロマチンにosH1は存在しないが、mRNAは存在していた。さらに4細胞期はMII期にくらべmRNAは減少していなかったことから、この乖離は翻訳レベルでの調節,又はクロマチンへの結合性の変化によると考えられた。 (3)非受精卵子においても体細胞ヒストンサブタイプ(H1a,b,c,d,e)がmRNAレベルで存在するが、そのsubtype構成は通常の体細胞と異なると考えられた。
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