研究課題
基盤研究(C)
卵子特異的ピストンH1(H1foo)は原始卵胞から2-4細胞期胚までにしか存在しないため、卵子の全能性や遺伝子のリプログラミングへの関与が推測されている。我々は2003年にヒト卵子特異的ピストン遺伝子を決定した。平成17年度は、卵巣内、および受精過程に於けるタンパク動態を検討した。推定アミノ酸配列の部分ペプチドを抗原として作成した家兎血清を用いた免疫組織化学染色では、卵巣内でH1fooは原始卵胞からグラーフ卵胞までの卵子のみに局在し、顆粒膜細胞や間質には局在は認められなかった。また、体外受精で受精しなかった卵子34個の精子核におけるH1fooの存在と、精子核膨化の関係を検討したところ、34個中15個が膨化もH1fooの反応とも見られず、精子核膨化をみた16個すべてにH1fooの反応がみられた。残り3個では膨化が見られなかったにもかかわらずH1fooの反応が見られ、本タンパクが受精のごく初期から精子核内に取り込まれることが明らかになった。さらに平成18年度は、胚発生に伴うmRNA量の推移、体細胞ピストンへの移行、および完全長cDNAクローンの作成と、これを用いた完全長タンパク発現を試みた。結果として、ヒトに於けるH1fooはnested-PCRによる半定量法で、4細胞で胚あたり3000-6000コピー程度存在するが、桑実胚期にいたると1000-2000コピーと減少していた。一方卵子・胚には体細胞ピストンH1aが発現することが明らかになった。また、市販ヒト卵巣組織cDNAライブラリから完全長cDNAクローンを作成し、タンパク発現を大腸菌、およびコムギ胚芽無細胞系で試みた。大腸菌では発現が見られなかったが、コムギ無細胞系ではタンパク発現がみられた。現在、精製タンパクからモノクロナール抗体を作成するとともに、組み替えタンパクを作成し、リン酸化部位を解析中である。
すべて 2006 2005
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