研究概要 |
進行内膜癌症例の術後補助治療の個別化を図るため、組織診・細胞診検体を用いて、MMR遺伝子等のgenetic/epigeneticな変化を検索する腫瘍の個性診断を行い、抗癌剤・黄体ホルモンの感受性に関する情報が得られれば、オーダーメイド治療が可能となることが期待される。H17年度は、DNAミスマッチ修復酵素遺伝子のひとつであるhMLH1遺伝子のpromoter領域のメチル化をMSI(マイクロサテライト不安定性)症例で高率に認め、またhMLH1遺伝子とhMSH6遺伝子に変異率が高い傾向を確認し、MSI-Hである症例では腫瘍免疫の中核をになうcytotoxic T cellの腫瘍内浸潤の多く、cisplatinに対する高感受性と関連していることを報告した。これを受けてH18年度は、以下の成績を得た。 1.手術検体を用いた検討にて、体癌の発癌過程には、hMLH1遺伝子、APC遺伝子、E-cadherin遺伝子、PAR-β遺伝子、p16遺伝子のpromoter領域のhypermethylationが関わっており、中でもhMLH1遺伝子において高率(40%)に認められた(Banno K, et al. Oncol Rep.2006)。 2.子宮体癌由来細胞株を用いて、細胞周期check point遺伝子の一つであるCHFR遺伝子のhypermethylationにより、タキサン系抗癌剤への感受性が亢進しており、demethylationにより感受性が低下した。体癌においてCHFR遺伝子のmethylationがタキサン系抗癌剤の感受性を規定することを初めて報告した(Yanokura M, et al. Oncol Rep.2007) 3.若年の初期体癌症例67例に対して高用量黄体ホルモン療法を行い、異型内膜増殖症には100%(28/28)、類内膜腺癌に対しては93.7%(30/32)の奏効率を得た。再発率は50%を越えたが1例を除きいずれも子宮腔内であり反復して同療法を行い、3名の妊娠に成功した。hMLH1蛋白発現が免疫組織化学的に減弱している症例では病変が消失しにくい傾向が認められた(Susumu N, et al. IJGC.2006)。
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