研究課題
1.前年度はDNAポリメラーゼ-FITC-dNTPを用いるnick translation変法によるDNA fiber中のnick部位検出を報告した。本年度は臨床検査としての簡便性を考慮してTdT(terminal deoxy-transferase)反応によるDNA鎖3'側末端へのFITC-dNTP付加を検討した。本法では、DNA fiber中のnickとともにDNA断片も蛍光可視化された。現在、nick translation変法とTdT反応を比較し、どちらの方法を採るべきかを検討している。2.前年度に開発した酸素パージ可能な培養ボトルを用いて精子swim up、媒精、受精卵培養を低酸素環境(酸素濃度2.0%)で行った。精子swim upを酸素濃度2.0%またはCO_2-air中で行い、DNA2重鎖切断精子(DSB精子)比率をSPCFGEにより比較した結果、低酸素によりDSB誘起抑制が可能であることが示された。さらに非働化血清存在下では、さらにDSB陽性精子比率を低下し得ることを認めた。本法による体外受精・胚移植を12例に施行し、4例に妊娠が成立した。例数が少なく統計的有意性は今後の検討課題であるが、胚形態所見は良好であった。3.HIV感染者は抗ウィルス薬(核酸アナログ製剤)を服用しており、造精過程において精子DNA損傷誘起の可能性がある。HIV感染男性(夫)の精液からウィルスを除去して非感染女性(妻)に体外受精を施行するのに際し、ウィルス排除と同時にDSB陽性精子排除を行う必要がある。密度勾配遠心、沈降速度差遠心、精子運動性に基づくswim upにより精液を分画した。最終的にDSB陽性精子比率は2%以下となり、さらに超高感度PCR(検出限界HIV 2copy/ml)により残存ウイルスが0であることが確認された。4.精漿を酸分解して、DNA fiberから遊離したd-アデノシンに由来するアデニンを測定した結果、精漿中にはDNA断片が存在するが、血漿中では検出限界以下であることを確認した。精漿内DNA量は一般精液所見とは相関せず、クラインフェルター患者で異常高値を示すことを観察した。
すべて 2006
すべて 雑誌論文 (1件)
AIDS 20
ページ: 967-973