昨年度までの研究で、我々はヒト妊娠子宮T型Ca^<2+>チャンネルには野生型(α1H-a:Δ25B/+26)の他に、チャンネルの膜貫通領域(domainIIIとIVの間)にあたるexon25Bと26のsequenceが異なる3つのsplice variant(Δ25B/Δ26、+25/Δ26、+25/+26)が存在し、それぞれの亜型で電気的特性に相違が有ることを見いだした。平成18年度は文書による同意の下に婦人科良性疾患のため単純子宮全摘時に子宮から採取した子宮筋切片を用いてPCR法によりT型Ca^<2+>チャンネルのαサブユニットのcloningを行い、すでに得ている妊娠子宮平滑筋でのT型Ca^<2+>チャンネル亜型とでその分布の違いやさらに他の亜型が存在していないかを検討した。手術前の説明で同意を得られた症例数が予想より少なく検討する事ができた検体数が5症例程度と十分な下図ではないので、確固たる結論を述べる段階に到っていないが、これまでの結果としては野生型のα1H-aの発現も妊娠子宮より非妊娠子宮ではL型との相対比率では低いようであり、また妊娠子宮に見られたsphce variantの発現はΔ25B/Δ26、+25/Δ26、+25/+26の全てにおいて非妊娠子宮での発現が乏しい傾向にあることが示唆される結果が得られている。T型カルシウムチャンネルが血管平滑筋等では培養中に増加することなどから、増殖に関与するチャンネルである可能性も示唆されているが、妊娠時に子宮筋は著明な増殖と肥大を示すことから、非妊娠時には発現が少なく、妊娠時に多いことは機能的な面から見ても合目的である。すなわち妊娠することでT型カルシウムチャンネルは発現が亢進するのかも知れない。検体数の不足および発現がほとんど認められないことから現時点ではXenopus oocyteへ非妊娠子宮から得たcDNAを組み込んで発現させ、電気生理学的に評価する実験は施行できていない状況である。
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