タモキシフェン(TAM)はDNA付加体を形成することによりDNA障害を示すことが報告されている。今回TAMに関連した子宮内膜ポリープのK-ras変異とアポトーシスの関係について検討した。 承諾の得られたTAM内服乳癌術後患者31名の子宮内膜ポリープ切除標本からenriched PCR-enzyme linked minisequence assay(ELMA)でK-ras遺伝子codon12の変異を検出した。細胞増殖能はKi-67をパラフィン切片から免疫染色して細胞の1000個中の陽性率を、アポトーシスはケミコン社のApopTag Peroxidase In Situ Apoptosis detection Kitを使用し、同様に細胞1000個中で陽性率を%で表した。有意差はMann-Whitney検定を使用し、P<0.05を有意差ありとした。この研究は当施設倫理委員会の承認を受けている。 子宮内膜ポリープをK-ras変異陽性群9例と陰性群22例に分けて検討した。平均年齢はそれぞれ63.3歳と61.9歳、ポリープの大きさは最大直径で平均1.9cmと2.0cm、Ki-67指数は18.2%と21.6%と有意差はなかったが、アポトーシス指数は3.8%と1.0%であり、有意にK-ras変異陽性群に多く認めた(P<0.001)。 K-ras変異陽性例では陰性例に比して細胞増殖能には有意差を認めないが、アポトーシスが亢進していた。生体内においてTAMのDNA傷害を監視し、アポトーシスを誘導する機序が推測された。以上の結果を日本産婦人科学会学術洲会にて発表することを予定している。
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