タモキシフェン(TAM)に関連した子宮内膜ポリープのK-ras変異とアポトーシスの関係について検討した。承諾の得られたタモキシフェン内服乳癌術後患者21名について、ポリープ切除標本またはエンドサイトで採取した子宮内膜をK-ras変異の検出に使用した。K-ras遺伝子codon12変異はenriched PCR-enzyme linked minisequence assay(ELMA)で検出した。初回のK-ras変異検査でK-ras変異を検出できた10例と検出できなかった11例を最大投与終了後3年半まで追跡した。年齢は27歳から71歳。TAMの総投与量は14.6gから63.6gまであった。6例でTAM投与中にまた1例で投与終了時にK-ras変異を認め、2年後以上追跡できた3例はすべてK-ras変異は陰性になっていた。また、投与終了後にK-ras変異を検出できた3例についても投与終了後3年で陰性なった。TAM投与時または終了時にK-ras変異陰性であった10例は、TAM投与終了後も陰性であった。以上より、TAM内服乳癌術後患者の子宮内膜におけるK-ras変異は、投与終了後2年以内にその多くは陰性になることが判明した。 その原因を検索するためにタモキシフェン内服乳癌術後患者31名の子宮内膜ポリープ切除標本からK-ras変異を検出し、細胞増殖能はKi-67をパラフィン切片から免疫染色して細胞の1000個中の陽性率を、アポトーシスはケミコン社のApopTag peroxidase in situ apoptosis detection Kitを使用し、細胞100個中の陽性率を%で表した。有意差検定はMann・Whiney検定を使用し、P<0.05を有意差ありとした。子宮内膜ポリープはK-ras変異陽性群9例と陰性群22例に分かれた。平均年齢はそれぞれ63.3歳と61.9歳、ポリープの大きさは最大径で1.9cmと2.0cm、Ki-67指数は18.2%と21.6%とそれぞれ有意差はなかった。アポトーシス指数は3.8%と1.0%であり、有意にK-ras変異陽性群に多く認めた(P<0.001)。K-ras陽性例では、生体内においてTAMによるDNA障害を監視し、アポトーシスを誘導する機序が推察された。これらの内容は第47回日本産科婦人科学会で発表した。またサンタモニカで行われたInternational gynecologic cancer societyの第11回の学術集会にても発表した。現在論文作成中である。
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