研究概要 |
頭頸部癌症例に対するドセタキセルを用いた化学放射線同時併用療法の、治療感受性及び予後を予測する因子を同定することは,適切な症例選択による精度の高い治療を実現する上で大変有用である。 我々はドセタキセル併用化学放射線同時併用療法を施行した、頭頸部癌新鮮例53例(喉頭27例、中咽頭11例、下咽頭15例)の腫瘍組織におけるサイクリンD1とp16の発現を免疫組織学的にレトロスペクティブに検討し、予後との相関を統計解析した。全症例の3年粗生存率、3年無病生存率はそれぞれ68.9%、54.5%であった(Kaplan-Meier法)。年齢、性、初診時臨床病期などの臨床病理学的所見と生存率との有意な関係は認められなかった。サイクリンD1陽性例(30例)は陰性例(23例)に対し、有意に無病生存率が不良であった(p=0.0004;Logrank test)。p16陰性例(37例)は陽性例(16例)に対し、有意に無病生存率が不良であった(p=0.015)。サイクリンD1の発現と無病生存率との関係を多変量解析を用いて検討した。サイクリンD1陽性例は陰性例に比べ有意に無病生存率が不良であった(p=0.009)。p53過剰発現と392セリン残基のリン酸化についても同様に、予後との相関を統計解析したが、p53と392セリン残基のリン酸化の両方共、それらの発現と予後との有意な相関は認められなかった。癌遺伝子のサイクリンD1と癌抑制遺伝子のp16はドセタキセル・放射線同時併用療法の予後予測因子として有用である可能性が示唆された。一方癌抑制遺伝子の一種であるp53は有用性を認めなかった。本研究の成果は、英文科学雑誌に現在投稿中である。
|