研究概要 |
CBA系マウス(10から12週齢、オス)の蝸牛から外有毛細胞を単離し、熱ストレスを与えない(コントロール)群の外有毛細胞膜剛性stiffnessについて原子間力顕微鏡を用いて測定した。マウスの有毛細胞は周囲の支持細胞との結合がモルモットと比して強く単離が困難である。条件の良い単離された細胞をより安定的に採取し、温度、単離から測定までの時間など条件を一定とし、蝸牛の部位による外有毛細胞膜のstiffnessの違い、また、従来発表されたモルモットの外有毛細胞膜stiffnessとの差異を示し、論文に発表した(Auris Nasus Larynx,2006)。 次に、熱ストレス(41.5度、15分間)の負荷を与えて3,6,12,24,48時間後のstiffnessの変化を、原子間力顕微鏡を用いて測定した。3,6時間後群では、熱ストレスを与えないコントロール群と比して有意にstiffnessが増大し、その後12,24,48時間でコントロール群とほぼ同様となった。この時間経過は、音響外傷を与えたときの防御効果の時間経過と同じ傾向を示し、stiffnessの増大が何らかの音響外傷に対する防御効果を導いている可能性が示唆された。 さらに、DPOAEを用いて蝸牛機能を、熱ストレス前後で測定すると、熱ストレス3時間後で、fl=10kHzで有意差を持って増加していることがわかった。このDPOAEが増加している原因について細胞の伸縮能のある有毛細胞モデルを想定し、モデルの妥当性を検討した。
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