研究概要 |
CBA系マウスを用いて、熱ストレス後の蝸牛外有毛細胞膜の1)stiffnessの変化、2)f-actin, prestinの変化、3)DPOAEをもちいた蝸牛機能の時間的、機能的相関を検討しコンディショニング効果発現機序を検討した。マウス外有毛細胞を単離し、その膜剛性の部位による違い、モルモットとの相違は平成17年度の研究に基づき発表し(Auris Nasus Larynx,2006)、さらに、熱ストレス(41.5℃、15分間)を与えることによる外有毛細胞膜の電気生理学的、形態学的検討を行い以下の結果を発表した(Brain Research,2006)。 熱ストレス(41.5℃、15分間)の負荷を与えた後、3,6時間後群では熱ストレスを与えなかった群と比して有意に外有毛細胞膜のstiffnessが増加した(原子間力顕微鏡を用いた研究による)。さらにその時間経過とほぼ一致するように、f-actinの外有毛細胞膜での増加が認められた。一方、外有毛細胞に存在する特異的な膜蛋白であり、外有毛細胞の伸縮能、耳音響放射(DPOAE)の発現に関与すると考えられるprestinの発現は変化しなかった。ストレス負荷によりコンディショニング効果の生じている際に観察されるDPOAEの増加と、音響外傷に対する防御効果は、外有毛細胞、その周囲の支持細胞のf-actinの関与した膜stiffnessの変化によって、蝸牛機能を変化させて生じている可能性が本研究により示唆された。
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