研究概要 |
癌抑制遺伝子p53は頭頸部癌において高頻度に変異を認め、変異に伴って蛋白の過剰集積をきたす。これまでに報告されてきたp53タンパクを認識するCTL細胞の誘導や同定、抗p53抗体の存在などは、集積したp53蛋白が生体内の免疫によって認識されていることを意味する。 今回,頭頚部扁平上皮癌患者の末梢血を使って,抗p53抗体の存在,anti-p53 helper T cell responseの同定,患者の癌組織におけるp53変異の有無を調べ,これらの相互関係ならびに臨床因子との関連を解析した。 19名の癌患者のうち11名がwild type p53由来のペプチドに対してIFN-γあるいはIL-5の産生を認め、anti-p53 helper T cell responseを示した。またこれら11名はすべて癌組織においてp53の過剰発現を認めた。これらの結果は、頭頸部癌患者体内においてanti-p53 helper responseが誘導されていることと、p53の集積は細胞性免疫誘導に重要な因子であることが示唆された。更に術後患者8名中2名で、helper T cell responseを同定できたことより、helper T cell responseが腫瘍切除後も維持されていると思われた。一方、抗p53抗体(-)の患者12名中の6名でも同様にhelper T cell responseが同定されたことより、液性免疫と細胞性免疫は必ずしもリンクしてないと考えられた。 臨床因子との解析では、担癌患者において、早期癌の患者ではTh1 responseが優位であったが、進行癌患者ではTh2 responseが優位であった。この結果は、病期の進行によりTh1/Th2バランスがTh2へとシフトしていくことが考えられ、このことが更に癌の進行を助けることになっていると思われた。 一方、制御性T細胞のマーカーであるFOXP3遺伝子の発現はanti-p53 helper responseの同定とは関連を認めなかったが、担癌患者の方が術後の患者より有意に高く、担癌状態における免疫抑制の一因であると思われた。
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