研究概要 |
1.頭頸部癌細胞株8種(Ho-1-u-1,HSC2,HSC3,HSC4,SAS, IMC3,KB, T3M1)におけるId1からId4までのmRNA量をReal time PCR法により定量した。かなり発現程度に差があったがId1-mRNAおよびId3-mRNAは全細胞に,Id2-mRNAはHSC3を除く7種類の細胞に,Id4-mRNAはHSC3,IMC3,KBを除く5種の細胞に発現を認めた。Id4-mRNAはId1-3に比べ、どのmRNAの発現も全体に少ない傾向にあった。(Ho-1-u-1,HSC2,HSC3,HSC4,SASは東北大学加齢医学研究所附属医用細胞資源センターから供与頂いた) 2.頭頸部癌組織切片による検討から、癌化およびその予後を規定する因子としてId2が関与する可能性が高いことを突き止めていたので、まずId2に対する検討を試みることとした。Id2-mRNAの発現はHo-1-u-1,HSC3,T3M1に発現が認められないか、もしくはごく少量であったため、頭頸部癌細胞株として我々が頻用しているT3M1に対しId2発現ベクターを用いId2-cDNAの導入を行った。その結果、導入効率が予想外に悪く、20%程度の細胞にしか導入されないという結果であった。 3.Id2-mRNA発現の少ないT3M1の親株と、Id2-cDNAを導入後のT3M1との間で増殖能の変化について検討を行った。有意差は出なかったがId2-cDNA導入後のT3M1は親株に比べて増殖率が高く、増殖能が亢進している傾向を認めた。 4.Id2を中心とした発現ベクターの頭頸部癌細胞株への導入効率が予想以上に悪いため、抗癌剤および放射線感受性に対する実験にまで到っていないのが現状である。今後、発現ベクターの作成とそのチェックを含め検討して行く予定である。
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