中耳への細菌感染により炎症性サイトカインの産生誘導が惹起される。これらのサイトカインが本来の生体防御機構を逸脱して過剰に産生されることが小児の滲出性中耳炎の遷延化・重症化に関連していると考えられている。サイトカインの過剰な産生は中耳滲出液中に存在する細菌由来のリポ多糖体等が局所に滞留することが一因とされている。 本研究ではヒト上皮細胞由来の樹立細胞株を用いている。気道の炎症も類似のメカニズムで起こると考えられ、現在は気管支上皮由来の細胞株を主に使用している。これらの細胞にリポ多糖体を作用させる感染実験系を設定し、種々のサイトカイン遺伝子の転写に関与する転写因子NF-κBの活性化をルシフェラーゼアッセイで検討している。同時にNF-κBの主たる活性化経路とされるNIK-IKKβ/γ-IκBα経路やp38 MAPキナーゼ経路に存在する種々のキナーゼのリン酸化がリポ多糖体により起こるかをウェスタンブロッティングで検討している。更に、これらの経路の特異的阻害剤を用いてリポ多糖体が惹起するNF-κB活性化が実際に2経路を介するものか否かの確認を行っている。 また、14員環マクロライドであるクラリスロマイシンで前処置した細胞において同様の実験を行っている。マクロライドによりNF-κB活性化が抑制されることが、実験で確認されている。現在はマクロライドの作用点が経路のどこに存在するのか検討を行っている。
|