研究概要 |
1.慢性低酸素暴露による頸動脈小体の形態的変化 3種類の慢性低酸素暴露(hypocapnic hypoxia, isocapnic hypoxia, hypercapnic hypoxia)により、頸動脈小体はそれぞれ異なった形態的変化を示した。Hypocapnic hypoxiaとisocapnic hypoxiaでは、頸動脈小体内の血管の拡張に伴って頸動脈小体の長径および短径が拡大した。Hypercapnic hypoxiaでは頸動脈小体の長径と短径は拡大したが、他の低酸素暴露による変化と比較すると拡大率は低かった。これは、Hypercapnic hypoxiaにおける血管の拡張が他に比して少ないことによると考えられた。(Histol.Histopathol.20:987-997,2005) 2.低酸素暴露による継時的な形態変化 低酸素暴露後4週まで頸動脈小体は拡大し、4週以降はプラトーに達した。8週間低酸素に暴露した後正常大気環境下に戻すと、頸動脈小体は1週間以内に急激に縮小し、その後は極わずかに縮小して4週間後にはほぼ正常な大きさに回復した。観察された頸動脈小体の大きさの変化は、血管の拡張と収縮によると考えられた。(Adv.Exp.Med.Biol.580:49-54,2006,Histol.Histopathol.20:987-997,2005) 3.頸動脈小体の形態に対する炭酸ガスの影響 Normoxiaとhypercapnic normoxiaでは頸動脈小体の形態には相違がなかった。1.の結果と総合すると、頸動脈小体の形態的変化特に血管の拡張と収縮には血中酸素濃度が大きく影響し、炭酸ガス濃度は影響しないことが考えられた。過去にわれわれが報告してきた結果を考え合わせると、低酸素暴露が頸動脈小体内の血管の拡張と収縮をもたらす一要因は、低酸素暴露による頸動脈小体内の神経ペプチドの変化であると思われる。(Adv.Exp.Med.Biol.580:55-61,2006) 4.今後の展開 低酸素暴露による神経ペプチドの変化とASICsの関連を形態学的(免疫組織化学、in situ hybridization)に探求する予定である。
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